どこかははっきりしていないが、父親と父の同僚に連れて行かれた、川釣りだった
と記憶している。それまでは、近所の池や釣堀ばかりだったが、なんとなく千葉に近い小さな川のようでおじさんたちがタナゴ釣りをしていた。幼いわたしはうるさい
小学校4年生ごろに夏休みに奥利根の宝川温泉に行った。当時は水上までSLだった。
川沿いには露天風呂もあり、4つ年上の兄と探検するようにプールと温泉を行き来して一日中遊んだ。プールのようになっている堰の下を下流に向かって川の中を歩いていくと
昔、タイル張りの露天風呂だったところが砂に半分埋もれていたが、川の水が流れ込んで淵のようになっていた。そこで泳ごうとした瞬間、2匹の大きな魚が悠然と泳ぎだし、川の中へと戻って行った。ほんの10秒あまりの出来事だったが、呆然と見送った。
それはあまりに美しい姿だった。
透明な水面と底の細かい砂の間で浮遊する魚体に、夏の光が映りこみ
エメラルドグリーンの世界で動く宝石のようだった。
子供ながらに、時間が止まったかのような、超現実的な体験を感じた。
魚の種類は、こどもだったので判らなかったが、大きな鱒のようだった。
それから、中学・高校と渓流で、虹鱒やヤマメ、岩魚を追った。