結局、オランダで買ってしまった
う仕事で30 回以上訪れているパリでも、ホテルのある中心部には釣具屋は少ないと思った。
昔はよく汚いセーヌ川で釣りをしている人がいたが、みんな餌釣りだった。ルアーや毛鉤を専門としている釣具屋で探し出せたのは、LA MAISON DE LA MOUCHE の一軒だけだったし、そのほかはスポーツ用品店の一角に餌釣りの釣具が置いてある程度だった。

凱旋門近くのWagram にあった Au Coin de Pêche は,当時仕事で通っていた事務所に近く、
ゲームフィッシング専門ではなかったが、Mitchell の新しいリールやアンティックな
リールも売っていたので、たまに買いに行った。
品揃えはそんなにあるわけではなく応対も無愛想だが、ジャガイモのようにごつごつした
店主の顔は、ジャン・ギャバンのように味わいのある風貌だった。
あるとき、珍しく店主がMitchell のカーボンルックのリールセットを勧めてくれた。
それは限定品だったが、そのときは興味もなく、買わなかった。
後日、欲しくなり買いに行ったが、店の在り処が判らなくなり、地下鉄の降りる駅を
間違えたのかとも思ったが、どう見てもここだという場所に店がない。
しかたなく近くの洋品店に聞いてみると、terminer という答えが返ってきたので、
店を閉じてしまったことが判った。

何年かして、オランダのアイントホーヘンで行なわれていた、大きなアンティック釣具の
ショーである Euroshow に参加した。このショーは欧州最大といわれるアンティック釣具
ショーでオランダはもとよりドイツ、イギリス、イタリアからもバイヤーやコレクターが
集まり、珍しいものが出ることがあるので、何回か参加したが、日本人は誰もいなかった。
そこで、バイヤーが売っていた釣竿のケースに Au Coin de Pêche の名前を見つけた
ときには懐かしく、そのお店のこと、店主の顔を思い出した

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Fishing Memorabilia 6
懐かしいパリの釣具屋