パリの出張で仕事がおわると、かならず一度は店に行っては掘り出し物がないか物色して
いた。
はじめて、La m aison de la mouche に行ったときには、結構変わった癖のある店だと思った。
かなり髭のながい店主の風貌は、いかにも骨董品屋の主人といった感じで、 当時パリのまだ珍しい フライフィッシング専門店であることを自慢していた。もちろん英語はほとんど通じなかった。
ほこりをかぶった古いリールや中途半端な品揃えのなかに Pezon et Michel の
真新しいフライロッドが何本かあったが、結構高いもので、そのころはまだ価値が
ぜんぜんわからなくて買う気にならなかった 、というより、そのシリーズのバンブー
ロッドはかなりずっしりしていて、ちょっとこれは、、、という感じだった。
あるとき、面白そうなフランス製の スピンニング用のバンブーロッドがあったので買おう
としたら、「オカジオン」だと言うのだが、それほどフランス語の単語の意味を知らない
わたしにはなんのことかさっぱりわからなかったが、後日フランスに住んでいる人に
聞いてみたら 「中古品(occasion )」のことだそうだ。辞書で引いてみると「お買得品」の
意味もあるみたいだけれど、あの店主がわたしに「お買得だ」と薦めるほど商売熱心では
ないだろうから、中古品だけど買うか?ということか。
何年かたって、久しぶりに行ってみると、例の店主がおらず、小太りの英語のわかる男が
カウンターにいるので、聞いてみたら、息子だという。代替わりしていたのだ。
そのときは、ちょうど Pezon et Michel の occasion があったので買った。
ウルトラライトよりもさらに繊細なロッドで、気に入って買 うことにしたのだが、これだけ繊細な釣竿にあう
リールがなにか気になり聞いてみると、「アルチェド・ミクロン」だと言い、それはとても、見つけることの難しいリールだと、私に同情するかのように言い、それにあうルアーはこれだと、毛鉤の付いた一番小さなサイズ 「0」 のメップスのスピナーをくれた。
そのときからわたしのイタリア製のリール探しの旅がはじまったのだった。




懐かしいパリの釣具屋2


